景色にはまだ、冬の名残。空気も冷たい。
そこに、ほんのり暖かい光が混じり始めている。
梅は、そんなあいだに咲いている。
梅の開花は、季節感が揺らぐ。まだ起きていない出来事が、かすかに、現在に触れてきているようにも思える。
梅を見て、ただ花が咲いているだけだと思う人もいるだろう。
でも、どこか懐かしいような、少し寂しいような、喜ばしいような、不思議な感覚を覚えることもある。
それはおそらく、時間の変化を見ているからではないだろうか。
季節の移ろい。あるいは、まだ来ていない春の予感。
人は、見えないものを想像する。
空間にじわっと広がる気配。
柔らかな香り。
花をはっきり見るよりも前に、何かを感じ取っている。
梅は春を見せる花ではない。
春を想像させる現象なのだ。
枝先に、小さな紅白の点が現れる。
その点をきっかけに、冬の記憶と、まだ来ていない春の暮らしを思う。
思考は、ほんの少しだけ、過去と未来へ向かう。そういうきっかけを時々、人は必要としているのかもしれない。
梅の花を愛でつつ、自分の中の時間を確かめて。