景色にはまだ、冬の名残。

空気の冷たさに、ほんのり暖かい光が混じり始める。

そんなあいだに、ほのかに香る。

 

梅の開花は、季節感が揺らぐ。

まだ起きていない出来事が、かすかに、現在に触れてきているようにも思える。

 

ただ見て、花が咲いているだけだと思う人もいるだろう。

でも、どこか懐かしいような、少し寂しいような、喜ばしいような、

不思議な感覚を覚えることもある。

おそらく、時間の変化を見ているからではないだろうか。

季節の移ろい。

あるいは、まだ来ていない春の予感。

 

人は、見えないものを想像する。

 

空間にじわっと広がる気配。

柔らかな香り。

花をはっきり見るよりも前に、何かを感じ取っている。

 

梅は春を見せる花ではない。

春を想像させる現象のようだ。

 

枝先に、小さな紅白。

その点をきっかけに、冬の記憶と、まだ来ていない春の暮らしを思う。

思考は、ほんの少しだけ、過去と未来へ向かう。

そういうきっかけを時々、人は必要としているのかもしれない。

 

梅の花を愛でつつ、

自分の中の時間を確かめて。

【 umeme 】

Mar. 2026